【第11回】東洋医学から見た脱毛症(円形、壮年性)

【第11回】東洋医学から見た脱毛症(円形、壮年性)

9回目には西洋医学での円形脱毛の治療効果を検討し、前回(10回)は永野医院での針治療の効果を検証しました。西洋医学的な脱毛症の発症機序は説明しましたし、東洋医学的な機序もほとんど書きました。

今回は、東洋医学の専門家である明治鍼灸大学の森和教授(当時)との共同研究を行った結果をまとめた文献を調べて見ましょう。

東洋医学のことはさっぱりわからないという方も多いと思います。できるだけわかりやすく解説して見たいと思います。

出どころは「東方医学、13巻1号p1〜8:1997」永野剛造、森和です。森先生は東洋医学を科学的に分析して理論化し「西洋医学との統合」(中西医結合といいます)を目指してきた、私が尊敬する先生です。

論文自体は1997年と20年前に書いたものですが、不変の真理は少しも変わっていないように思います。以下その論文の内容を紹介します。

毛髪の基本原理に基づく調査を実施

東洋医学では脱毛症に対して一定の概念があります。

図に示すように、髪は血余(けつよ)ともいわれ「精」「気」「血」のバランスが崩れると抜けるといわれています。この原理は男性型脱毛でも、円形脱毛でも共通であるということです。

円形脱毛および壮年脱毛と対照群(正常な人)の比較

東洋医学の概念

対象は男性円形脱毛症21例、壮年脱毛50例、対照群(正常な人)43例でした。毛髪の基本原理に基づいて、体の中にどのようなことが起こっているかを調べる目的で調査票を用いました。

内容は21項目にわたり体調についての質問です。

「良くある」が1)で、「時々」が2)、「ない」が3)です。平均点が低いほど、その傾向が強いということです。

アンケート

結果はとても興味深いものでした。次の表に結果が出ています。

有意差

  1. 1.円形脱毛では対照群に比べ全項目で有意差は見られませんでした。
  2. 2.壮年型では21項目中8項目で有意差がみられました。有意差の見られた項目はどれも対照群に対して低い数値が得られました。
  3. 3.円形も壮年も、「肩こり」から「ストレスがたまりやすい」までの4項目は壮年にたいして有意に高い値が得られました。

数値ではわかりにくいので、グラフで見ればわかりやすいです。

グラフ

壮年性脱毛症とストレスの関係性

まずは、特徴的な壮年性脱毛から見ていきましょう。対照群よりも有意に低い数値が出た8項目を見ると…

  • イライラする
  • のぼせる
  • 手足が冷える
  • 首、肩がこる
  • 疲れやすい
  • ストレスがある
  • ストレスがたまりやすい
  • やる気がなくなることがある

東洋医学的には、通常、イライラは怒りの表れで「肝」にあり、「怒りは気血を上逆させ、陽気を昇発させる」といいます。

簡単にいうと頭に血が昇って、カッカする(のぼせる)ということです。この結果、気の流れが滞り、「肝鬱気滞」(肝でせきとめられて気が流れなくなる)という状態になります。

このために「気、血」の関係が悪循環に陥り、慢性化してくると「肝腎両虚」という状態になります。

腎虚となるときは一般に陰の気が虚(足りなくなる)することで、陽の気が余ってしまうために熱が出てきます。この熱を「虚熱」と言います。

熱は上に昇るので「のぼせ」症状がでると同時に熱が上に昇るので下肢が冷え「上熱下寒」という(のぼせているが足は冷えている状態)が生じます。

調査票で示したところの「肉体的には肩がこり、冷える、やる気が出なくて疲れを感じる。」といった【虚の状態】になってしまいます。

このような状態は脱毛症が進んだ時の体の状態です。

忘れてならないのは、こうなる前は「実証」と言われる正反対の状態で仕事バリバリ、お酒ガブガブ、タバコスパスパ、徹夜オーケー、部下には怒鳴りまくる、顔は脂ぎってギラギラというやたら元気な状態があったはずなのです。

頑張りすぎていると、何が起こるか?体はストレスと受け止めていますから、ストレスに負けないように副腎、そのほかの臓器がフルに働いて、抗ストレスホルモンを猛烈に出してカラダを持たせています。

それらのホルモンの中には当然男性ホルモンが含まれていますから、その結果はどうなるでしょうか?

あとは、現代医学の研究のとおり、毛髪に影響が出てくるのですね。

「男性型脱毛症は薬で治す」みたいな話になります。

Q.「壮年脱毛の人はみんな元気でバリバリ働いているひとばかりなのですか?」

こんな質問が出ると思います。

頑張りすぎの状態が続くとどうなるか知っていますか。東洋医学では、頑張っている状態を「実(証)」と言います。

ところが頑張った状態を続けると、気=エネルギーが消耗してしまうのです。この状態は「虚(証)」と言います。頑張って働き続けるとだんだん元気が無くなってパワーが落ちてきてしまうのですね。

こうなると脱毛ばかりでなく、ほかの病気のことも心配しなくてはならなくなります。

壮年性脱毛で受診する人は、実証から虚証に移行した人が多いということです。

壮年性脱毛は、猛烈に無理な生き方をして疲れ果ててエネルギー(気)が回らなくなった時に男性ホルモンの影響が重なって生じる。と総括できると思います。

円形脱毛症の特徴は冷えと肩こり

反対になりましたが、次は円形脱毛症です。こちらはコントロール群と有意差はなかったですね。

こちらの特徴は冷えです。自覚的な評価では対照群と有意差は認められませんでしたが、実際には冷えと、肩こりが必発(ひっぱつ)の症状です。

この冷えの原因は「腎虚」です。

円形脱毛症の特徴は「とても真面目で、神経質、周りのことに人一倍気を使う、怖がり屋さんが多い」ことです。このような心の状態は腎に影響を及ぼすことが東洋医学ではわかっています。

腎が原因で極めて強い虚証があるのですが、自覚的には何にも出てこないのが特徴です。

壮年脱毛と円形脱毛ではこの様な違いがありますが、ほとんどの人が気づいていない(自覚していない)ということは円形脱毛の特徴といっても良いでしょう。

おわりに

脱毛症の症状ばかりに気を取られていると、本質的なことが見えないのですね。

このコラムを読んで、何かに気がついた方は生活そのものを見直してください。今回はアンケート調査からわかった壮年脱毛の特徴をお示ししました。

「ガンバリ過ぎていることに気がつかない」猛烈サラリーマンの方は、遺伝的には「家系的に若ハゲにならない」と思うのは自由ですが、体は正直だということを覚えておいた方が良いと思います。

最後に一言。ツケは髪の毛に回ってくるのです。生活の改善は人生そのものにとって大切なことだと思います。

著者情報

永野剛造(医学博士・日本自律神経病研究会理事長)

永野先生

昭和50年:慈恵医大卒業・麻酔科研修開始
昭和52年:慈恵医大麻酔科入局
昭和59年:富士中央病院麻酔科部長
昭和62年:慈恵医大皮膚科入局
平成3年:同退局
平成4年:永野医院を開業し、現在に至る

  • ・円形脱毛症などの脱毛症やアトピー性皮膚炎などを、西洋医学と針などの東洋医学を併用して治療にあたっている
  • ・16年前から安保徹先生、福田稔先生と自律神経と免疫の研究を行い、現在、「自律神経病研究会」の理事長をつとめる
  • ・独自の波動測定によりエネルギーの研究、治療を得意とし、脱毛症の治療に特別な成績を残している。

 

免責事項
本稿で引用されている専門家や組織の見解と意見は、あくまでも各自のものであり、必ずしも属する機関や協会、またディーエムソリューションズ株式会社の意見を代表するものではありません。 本記事に記載されている情報は、他の専門家によるアドバイスとは異なる可能性があります。特定の健康上の懸念がある場合は、個別事象の専門家に直接ご相談ください。

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