【第10回】はり治療の併用による円形脱毛症の治療

【第10回】はり治療の併用による円形脱毛症の治療

前回は円形脱毛症の皮膚科治療について詳しく見てみました。その結果、皮膚科治療ではあまり良い結果が出ていないと考えられました。

今回は、私が円形脱毛症の専門クリニックとして開業した当初から併用していた"はり治療"の効果を紹介したいと思います。

と言っても私がはりを打つのではなく、ベテランの鍼灸(しんきゅう)師が針治療を行います。私はその総監督として皮膚科医の立場で波動療法を併用しながら、患者さんの経過をみていく立場です。

私の過去の研究と論文発表から紐解く事実

今は波動の治療が大きな影響を持つと確信していますが、開業した当時は波動の器械とは巡り合っておらず、皮膚科治療とはり治療のみでした。特に当院では"閻三針(えんさんしん)"という円形脱毛症に著効(ちょこう)を示すという特殊な手法を使っていました。

※閻三針(えんさんしん)=脱毛症に特異的に効果のある頭部のツボを使う、独特の刺針法 著効(ちょこう)=著しく効果をもたらすこと

私は皮膚科の治療に懐疑的だったので、ほぼ100%はり治療の効果だと考えています。

論文は1993年(平成5年)に"皮膚科の臨床"という皮膚科の専門の雑誌に掲載されたものです。【皮膚臨床35(5);745~751,1993「針併用療法による全頭脱毛症の治療」永野剛造ほか】という題名です。

対象は1990年4月~1991年9月の1年半に受診した全頭脱毛症75例(男31例、女44例)です。
研究開始時に次の二つのポイントを考えました。

第1点は、円形脱毛症は広がったり移ったりするので、多発型などでは評価ができないということです。

そこで全頭脱毛なら毛髪はゼロなのですから、ゼロスタートで発毛の様子だけを判定すれば良いことになります。一目瞭然ということで、その効果判定には誰も文句をつけられません。

これまで全頭脱毛症だけを対象にした報告はありません。
皮膚科治療で効果が出ないのですから、評価のしようがないのですね。

第2点は、「発症から治療開始までの期間で治療効果に差があるようだ」ということです。図にして説明しないとわかりにくいので、以下をご覧ください。

全頭脱毛4つのパターンと期間や治療効果を比較

治療の進展パターン

発症から全頭になるまでに、以下四つのパターンがあると思います。

  1. 1.一気に全頭脱毛になる型
  2. 2.80%くらい治ってまた悪化を繰り返して全頭になる型
  3. 3.一度完治するが、ある時一気に脱毛する型
  4. 4.徐々に悪化して全頭脱毛になる型

どの脱毛型が治療に対して反応が良いかという質問がありますが、どの脱毛型にも早い遅いがあるようで、決めつけることはできません。最初に脱毛症が起こった時からということになると、四つの型で全頭になるまでの時間がさまざまですから、比較のしようがなくなってしまいます。

そこで、全頭脱毛になってから受診までの期間で分けることにしました。全頭脱毛というのは根こそぎやられた状態ですから、多発型やびまん型のような他のタイプの脱毛症とはやられ方のレベルが違うのです。

症例の分類ではどのように治療効果を判定したのでしょうか?全頭脱毛になってから受診するまでの期間を以下のように分けました。

  1. 1.1年未満(14例)
  2. 2.1年~3年未満(13例)
  3. 3.3~6年未満(20例)
  4. 4.6~10年未満(13例)
  5. 5.10年以上(15例)

治療効果の判定も以下のの5段階評価にて行いました。

完治(略治) 完全治癒もしくはカツラが不要になった状態
著効 頭部全体の半分以上に硬毛が発生するが、いまだカツラが必要なもの
有効 硬毛の発生は見るが頭部の半分以下のもの(有効以上を効果ありと判定しました)
やや有効 硬毛の発生はわずかにあるか軟毛だけがみられる。または体毛に変化が見られる
無効 全く変化が見られない

※完治=完全に治ること 略治=治っているが再発の可能性を含むもの 著効=著しく効果をもたらすこと

各群間の統計処理結果

結果の評価は有効以上が効果ありとして、各群間統計処理を行ってみました。

発症から3年以上たつものは難治性といえるので、1年未満、1~3年未満、3年以上の難治性、この三つの群に分けて効果を判定しました。

治療の結果

図を見ればだいたいわかりますが、詳しく説明しましょう。太い線が"有効"と"やや有効"の境になりますので、太い線から上を"効果あり"と判定しました。

  1. 1.1年未満では、有効率は93%に達し、やや有効は無く、7%が無効であった。
  2. 2.1~3年未満では有効率は92%であったが、著効率以上は54%と低下した。またやや有効が8%、無効は0%であった。
  3. 3.1年未満と1~3年には有効率では差がないが、著効率では有意の差が見られた。これは治療までの期間が長くなればなるほど、回復に時間がかかることを意味している。
  4. 4.3年以上の難治性群は有効率が有意に低下した。

これから言えることは、病気の経過期間が長くなると治療に時間がかかるということを表しています。1年未満の症例の中にはいわゆる自然治癒の症例があると考えられるので、本当の治療効果と言えるのは1年以上の症例であると言えます。

はり治療なら全頭脱毛でも約90%の反応が出る!

それでも発症から3年までなら著効率54%、有効率は92%というのは立派なものだと考えています。

また3年以上たった症例でも46%の有効率であるということはかなりの評価をしていただけるのではないでしょうか。

さらに発症から3年以上たった超難治性の症例を比較し分析してみました。

3年以上の治療成績

3~6年と10年以上で有効率以上に有意差が見られました。この結果でも全頭になってからの時間が長くなればなるほど治療は困難を極めるということがわかると思います。

検査対象を締め切ったのが、1991年9月です。論文は1993年5月ですから、治療期間は1年半くらいで結果を整理しています。全頭脱毛では産毛が出始めるのに、長い人では治療開始から1年くらいかかることもあります。

もう少し治療期間を取れれば、3年以上の難治性患者さんでも有効率(効果)は上がったと考えています。

いかがでしょうか。皮膚科治療では平均20%の効果でしたね。はり治療でじっくり治療をすると全頭でも90%くらいに反応が出る>ということをご了解いただけたでしょうか。川上療法と川下療法の違いが、これくらいはっきり結果で出る病気も少ないと思います。

ただし、円形脱毛症の治療は時間がかかります。発毛がはじまるまでに1年くらいかかることを覚悟して、じっくり治療に取り組んでください。

この論文は永野医院のサイトからダウンロードできますので、原本を確認したい方はどうぞお読みください。

おわりに

前回の皮膚科の治療報告と今回の結果を比較してどう思われましたか?川上療法(原因療法)と川下療法(結果療法)の違いがよくわかったのではないでしょうか。

今の医療の縮図が脱毛症の治療に見られると思います。川上療法の研究をしている「自律神経病研究会」の考え方を徐々にお示ししますので、脱毛症に限らず現代医療に振り回されているとお感じの方は「自律神経病」の考え方を学んでください。

著者情報

永野剛造(医学博士・日本自律神経病研究会理事長)

永野先生

昭和50年:慈恵医大卒業・麻酔科研修開始
昭和52年:慈恵医大麻酔科入局
昭和59年:富士中央病院麻酔科部長
昭和62年:慈恵医大皮膚科入局
平成3年:同退局
平成4年:永野医院を開業し、現在に至る

  • ・円形脱毛症などの脱毛症やアトピー性皮膚炎などを、西洋医学と針などの東洋医学を併用して治療にあたっている
  • ・16年前から安保徹先生、福田稔先生と自律神経と免疫の研究を行い、現在、「自律神経病研究会」の理事長をつとめる
  • ・独自の波動測定によりエネルギーの研究、治療を得意とし、脱毛症の治療に特別な成績を残している。

 

免責事項
本稿で引用されている専門家や組織の見解と意見は、あくまでも各自のものであり、必ずしも属する機関や協会、またディーエムソリューションズ株式会社の意見を代表するものではありません。 本記事に記載されている情報は、他の専門家によるアドバイスとは異なる可能性があります。特定の健康上の懸念がある場合は、個別事象の専門家に直接ご相談ください。

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