【第9回】円形脱毛における皮膚科の治療

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前回も申し上げましたが、円形脱毛症の発症原因の例えとして、日照りで花壇の花が枯れること、山の森が枯れること、林が枯れること、となりの芝生が枯れることなどを挙げました。関係する要因は多少違うでしょうが、お水が足りなくなって枯れるということが共通した原因です。

髪の毛は植物と同じですから、全く同じ理屈が成り立ちます。いかがでしょう。これが円形脱毛症の起こる根本的な原因であると考えるのはおかしいでしょうか。常識的に考えて、この考えがまっとうなのではないかと考えています。

「川上療法」で根本的な解決を!

わたくしは、円形脱毛症の原因を「ストレス」や「血流障害」にあると考えていますので、患者さんにこのことを水の流れで説明します。川上から始まり、海へ流れ出ていくという一連の流れのごとく、ストレスというトラブルにより、海に流れる水がその流れの中で汚染されていくというイメージです。

一方、皮膚科では「身体の中でどんな反応が起きているかはハッキリわからないが、局所には明らかな免疫反応が起きているのだから自己免疫疾患である」、という考え方が一般的です。一言で言うと「円形脱毛症は原因不明の自己免疫疾患」で片付けられています。

実際に患者さんに聞くと必ずこのように言われます。「原因不明の自己免疫疾患」これはとても都合の良い言葉です。裏を返せば、「自己免疫疾患は治らないのだから、仕方ないですね。」という言い訳が見え隠れします。これを抑えるには、「ステロイドを使うか、かぶれさせて他の白血球に置き換えれば良い」という理屈です。

私に言わせると、皮膚科の考え方は川上の方に原因があって起きてくる問題を川下だけで処理しているようなもので、これでは根本的な解決はできないだろうと思います。

もっと簡略化すれば、ストレス、血流障害を主とする治療を"川上療法"、皮膚科の考え方は"川下療法"というとイメージを持ちやすいのではないでしょうか。あくまで仮説ですから、どちらが正しいとは断定できません。読んだ方がどう判断するかということです。

円形脱毛の経過に関する「日本皮膚科学会誌」の報告

理屈ではなくその治療の結果を見るのが、一番簡単なので比較して見たいと思います。もちろん治療法が違いますから発表された結果を「皮膚科での治療成績」として検討して判断することになります。

まず皮膚科の結果から見てみましょう。今回は某大学が発表した論文から検討してみることにします。出典を明記しないと後でしかられてしまいますので紹介します。

出典は日本皮膚科学雑誌。【122(7)1757-1,763,2012】です。日本皮膚科学会誌という日本皮膚科学会公認の医学雑誌ですから、内容は十分吟味されていて間違いありません。内容は某大学の皮膚科で発表したもので、383例についての円形脱毛の経過に関する統計的な報告です。なお、こちらは2000年から2008年まで、8年間の円形脱毛症患者を分析したものです。

それでは、中身を確認して行きましょう。性別は男性152例、女性231例とやや女性が多いようです。これはこの大学での話なので「円形脱毛は女性に多い」と早とちりしないでください。

病型分類は以下の通りです。

  1. 1.単発34例
  2. 2.少数型(病変が2〜4個)60例
  3. 3.多数型(病変が5カ所以上)146例
  4. 4.び漫型(易抜毛性が全頭に認められ、境界明瞭な脱毛斑を欠く)52例
  5. 5.全頭型12例
  6. 6.汎発型(頭髪のみならず、全身に広がるもの)61例
  7. 7.蛇行型(生え際に帯状の脱毛斑がみられるもの)12例に分類しています。

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※略地を赤枠で囲っています

治癒後6カ月後に再発のない物を略治(りゃくち)として、以下再発、離脱、治療中に分類しています。以下にそのポイントを書き出してみます。

【ポイント1】単発型の略治率は40%であるものの…

略治例は全体の23%であり、単発型は40%略治したが、その他の病型では20%以下にすぎなかったという事です。

単発型は自然治癒の可能性が高いといわれているので、40%の略治は当然だろうと思われます。問題はそれ以外の病型の略治率が20~33%程度ということでしょう。多発型でも全頭型でも円形脱毛の発症の原因は同じですから、単発型以外の病型で略治率がこの程度であるという事は何を意味しているのでしょうか?

もともと円形脱毛は自然治癒する事もあるといわれていますから、この略治率は治療効果というより、円形脱毛の自然治癒の割合を示していると考える方が妥当です。このように考えると皮膚科の治療の効果はほとんどないという悲惨な結論になってしまいます。

皮膚科学会からしかられそうな内容なので、皮膚科の先生は内緒にしてください。

【ポイント2】発症まもなくの段階はステロイドが効果的

ステロイド剤の内服とPUVA療法の組み合わせで、"易抜毛性あり"の症例が"易抜毛性なし"の症例より有意に略治率が高かったようです。

統計処理で有意差が出た内容を示していますが、易抜毛性というのは軽く引っ張っただけで簡単に抜ける状態を言います。毛が抜けやすいか抜けにくいかは、脱毛が始まってからの期間によって決まってきます。

発症間もないときはまだ広がって行く可能性のある時期で抜けやすいのですね。つまり"易抜毛性あり"というのは脱毛が現在進行形で進んでいる事を表しています。

この時にステロイドを内服するのは非常に有効な治療なのです。ステロイドの内服を安易に続けるのは良くないのですが、発症初期の抜けやすい時、すなわち"易抜毛性あり"の状態では使うべき薬>だと思っています。

アトピー素因のある患者にステロイド剤内服は再発率が高い傾向に

アトピー性皮膚炎がベースにあって発症するときは、たいていアトピーの悪化がみられています。そこでステロイドの内服は有効なのですが、ステロイドをやめるとアトピーが悪化して再発する事になります。せっかく治ってきたのにステロイドをやめるとまた抜け毛が増えてしまいます。

場合によっては、頭部全体的に見てかなり改善していたものがすっかり抜けてしまう事もあります。ステロイドの量を減らしていけば、抜け毛は増えてしまいます。患者さんが「先生また抜けてきました」と訴えると、先生は「それではステロイドを続けましょう」というと思います。

もともとステロイドには「多毛」といって体中の毛が濃くなる副作用がある事が明記されています。つまり、ステロイドの副作用で毛が生えやすくなるのです。

「ではそのステロイドを減量するとどうなりますか?」と問われると、当然その薬の副作用はとれてきますから、結果は……そう、せっかく生えてきた毛が抜けてしまうのです。

このようなメカニズムがあるという事を患者さんには知っておいてほしいです。

もう一つ気がついた資料があるので見てください。

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色々な円形脱毛症の治療で効果があったかを示すものです。皮膚科で行なわれる円形脱毛の治療がほとんど網羅されています。赤枠で囲ったところをみてください。ビマン型までは有効な方法もみられますが、全頭型から右では略治率はほとんど0です。

唯一ステロイド(トリアムシノロン)の局所注射が全頭型で13%、蛇行型で17%だけ略治に持って行けたようですが、重症の脱毛症には打つ手がないと言う事がハッキリ分かります。

おわりに

残念ながら、皮膚科の治療は重症の円形脱毛には打つ手がないのだという事を証明するような内容でした。先述した「川下療法では難治性の脱毛は治せないと言う事です。これでも結果をきちんと発表した事に関しては敬意を表したいと思います。

次回は私が長年やってきた針併用療法による治療法を検討してみましょう。

著者情報

永野剛造(医学博士・日本自律神経病研究会理事長)

永野先生

昭和50年:慈恵医大卒業・麻酔科研修開始
昭和52年:慈恵医大麻酔科入局
昭和59年:富士中央病院麻酔科部長
昭和62年:慈恵医大皮膚科入局
平成3年:同退局
平成4年:永野医院を開業し、現在に至る

  • ・円形脱毛症などの脱毛症やアトピー性皮膚炎などを、西洋医学と針などの東洋医学を併用して治療にあたっている
  • ・16年前から安保徹先生、福田稔先生と自律神経と免疫の研究を行い、現在、「自律神経病研究会」の理事長をつとめる
  • ・独自の波動測定によりエネルギーの研究、治療を得意とし、脱毛症の治療に特別な成績を残している。

 

免責事項
本稿で引用されている専門家や組織の見解と意見は、あくまでも各自のものであり、必ずしも属する機関や協会、またディーエムソリューション株式会社の意見を代表するものではありません。 本記事に記載されている情報は、他の専門家によるアドバイスとは異なる可能性があります。特定の健康上の懸念がある場合は、個別事象の専門家に直接ご相談ください。

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