【第2回】徹底的に円形脱毛

【第2回】徹底的に円形脱毛

前回、このコラムは円形脱毛を徹底的に分析しようと思い書き始めたとお伝えしました。それでもあまり確信はなかったのですが、自分でも意外なほどに反響があったので、再度決意を新たに「徹底的に円形脱毛」をテーマにして行きます。一つの病気を徹底的に突き詰めると、他の病気への対応もわかってくると思います。

皮膚科に移ってからは脱毛症外来を担当していました。当時、皮膚科の教科書には「円形脱毛症はじんましんとともに皮膚科を代表する心身症である」と言われていました。心身症とは「身体症状を主とするが、発症の原因として精神的ストレスが強く関与する病気」と定義されています。

「そうかストレスが影響しているのか!!」ということを学び、脱毛症に専門的に取り組んでいた先輩の後について、脳波の研究や精神分析のロールシャッハテストなどの勉強をしました。(専門の心理士や脳波の技師さんの結果をお教えてもらうだけのものですが…)

この時に共同著者として出したのが西日本皮膚科49巻4号に掲載された、「円形脱毛症における脳波学的及び精神医学的所見」というとても難しそうな題名の論文です。患者さんの脳波と精神医学的検査法として有名なロールシャッハテストから患者さんの状態を把握しようというもので、素晴らしい内容の論文でした。

このように先輩の後について、勉強していたころが懐かしく思い出されます。

円形脱毛症の原因とは果たして

それでは、円形脱毛症の原因について紹介しましょう。

皮膚科において円形脱毛症の原因とは「遺伝説」、「ストレス説」、「自己免疫説」、「自律神経失調説」、「アレルギー説」などが考えられると言われています。

何人もの研究者が円形脱毛症の原因を考えてきましたが、その原因論について明確な理論が確立されていません。いくつもの原因が挙げられているのにどれも「帯に短し、たすきに長し」という状態なのです。皮膚科学会が提唱している円形脱毛の治療指針とも言うべき「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2010」というものを参考にしてみましょう。

3.AAの病因・病態(AA=Alopecia Areata=円形脱毛症の略)

病因としてさまざまな説が提唱されているが、近年は毛包組織に対する自己免疫疾患と考えられている1)2).疲労や感染症など肉体的!精神的ストレスを引き金に,毛包由来の自己抗原をターゲットにした自己免疫反応が誘発されると想定されるが、明らかな誘因がないことも多い。病理学的には毛包周囲にリンパ球を主体とした密な浸潤が観察される。自己免疫疾患の合併が多いこと(次項参照),免疫修飾作用のある治療法に効果を みること(CQ1,2,3,4,5,8,13,14 参照)も自己 免疫病因説を支持している

ちょっと難しいので解説しましょう。

明確に分かっている事は、脱毛症の皮膚の組織を切り取って顕微鏡で観察すると、白血球の一部であるリンパ球が毛根の周りに集まっていて、炎症を起こしている事がハッキリ分かります。つまり、自分の毛根の組織を自分の白血球が攻撃しているという事なのです。これを最大の根拠として、皮膚科では円形脱毛症を「自己免疫疾患」であると定義しています。

ただし、その原因は不明であるという事で、「円形脱毛は原因不明の自己免疫疾患である」と決めつけられているのです。

円形脱毛症とストレスの関係は?

それでは皮膚科の先人たちが言っていた「円形脱毛症は心身症である」という貴重な意見はどこに行ってしまったのでしょう。ストレスと円形脱毛症の関係について、またガイドライン 2010を見てみましょう。

8.AA 発症と精神的ストレス

AA 発症に精神的ストレスか関与するとの説が流布している.また,一般診療で,精神的ストレス後に脱毛を生じた症例を経験する機会もあるが、全くその関与を自覚しない患者も多い。精神的ストレスの関与を論じる際の問題点は、ストレスの定義および科学的根拠に基づく評価法が曖昧なことである。 (中略) 臨床的観察から精神的ストレスの関与が明らかな症例群の抽出が困難なためか、今もって AA 発症と精神的ストレスとの直接の関連性についての科学的根拠は 乏しい。医師が個々の患者の精神的背景因子を見出し、治療に生かす工夫・努力は望まれるが安易に AA とストレスの関与を唱えるべきではない。

このような評価をされています。「円形脱毛症は皮膚科の代表的な心身症である」という先人の考え方から離れて、確たる証拠が得られないからストレス説は信用するに値しないという事です。

「皮膚の所見だけが確実なものなので、それ以外の曖昧な考え方は安易に取り入れるべきではない」これが皮膚科学会の主張である事がはっきりしています。

そうすると、「原因不明の自己免疫疾患」というお決まりの言葉は、「自己免疫疾患というのは治るか治らないか分からない病気です」という事を表していて、「治らなくても、責任はありませんよ」という事になります。

私が考える自律神経免疫理論

皮膚科学会正反対の考え方があります。それが福田-安保両先生が提唱する「自律神経免疫理論」からのアプローチです。

「自律神経免疫理論を研究する会」というのがありまして、この自律神経免疫理論を研究する会は私が責任者をしており、「日本自律神経病研究会」といいます。この研究会が主張する「自律神経病」とは自律神経の不調によって引き起こされる病のことです。残念ながら今の保険医療の中にはありません。1番身近なのが皆さんよくご存じの「自律神経失調症」です。

この自律神経失調症という病名は、自律神経をキチンと研究してつけられた名称ではなく、何となく自律神経が悪そうだなという人につける、医者としてはとても便利な病名です。

おわりに

このコラムをお読みの方は「自律神経病」という言葉が頻繁に出てきますから、くれぐれもその本当の意味を正しく理解して、これからの生活に活かして下さい。

著者情報

永野剛造(医学博士・日本自律神経病研究会理事長)

永野先生

昭和50年:慈恵医大卒業・麻酔科研修開始
昭和52年:慈恵医大麻酔科入局
昭和59年:富士中央病院麻酔科部長
昭和62年:慈恵医大皮膚科入局
平成3年:同退局
平成4年:永野医院を開業し、現在に至る

  • ・円形脱毛症などの脱毛症やアトピー性皮膚炎などを、西洋医学と針などの東洋医学を併用して治療にあたっている
  • ・16年前から安保徹先生、福田稔先生と自律神経と免疫の研究を行い、現在、「自律神経病研究会」の理事長をつとめる
  • ・独自の波動測定によりエネルギーの研究、治療を得意とし、脱毛症の治療に特別な成績を残している。
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